税理士事務所と会計事務所の違いとは?業務内容や選び方を徹底解説

税務相談や確定申告等、税理士に依頼する場合、税理士事務所に依頼すべきか会計事務所にするべきか迷う場合があるかもしれません。また、会計士事務所もあるので、どの事務所を選べばいいのか迷うことでしょう。

本記事では、税理士事務所と会計事務所の違いについて解説します。

業務内容や選び方を紹介するとともに、あわせて会計士事務所、税理士法人についても解説しますので、利用する際の参考にしてください。

 

<h2>会計事務所と税理士事務所の違い

会計事務所と税理士事務所の違いについてですが、業務内容は同じです。ここでは、どのような業務を取り扱っているのか、どうして会計事務所というのかについて紹介してきます。

 

<h3>「会計事務所」と「税理士事務所」は同じ

「会計事務所」と「税理士事務所」は名称こそ異なりますが、業務内容に差異はなく、同じ業務を取り扱っています。どちらも会計・税務に関する業務を取り扱っており、基本的なサービスは同じです。

 

税理士法第40条2項には、「税理士が設けなければならない事務所は、税理士事務所と称する」と定められています。つまり、税理士が設立する事務所は「税理士事務所」が正式名称です。では、会計事務所と称しているのはなぜでしょうか。

 

通常、税理士事務所は税務業務以外にも、決算書の作成や記帳業務、会計相談やコンサルティング業務といった会計業務も取り扱っています。

一般的に、税理士事務所という名称ならば、税務に特化した業務のみを取り扱っていると思われる可能性が高いです。そのため、名称を会計事務所とすることで、決算業務も取り扱っていると一般的に認知されやすいために名乗っていると考えられます。

 

名称の違いこそあるものの、「会計事務所」と「税理士事務所」の業務内容は同じであることを覚えておきましょう。

 

<h3>税理士事務所・会計事務所の仕事内容

税理士事務所・会計事務所の業務内容は主に次の3つです。それぞれ、順を追って紹介します。

 

  • 記帳代行
  • 相談・コンサルティング
  • 決算・申告・巡回監査

 

<h4>記帳代行

記帳代行は、企業や個人事業主が日々の取引を正確に記録するためのサービスです。税理士は、仕訳帳や総勘定元帳への記入を行い、財務諸表の作成に必要な基礎データを整えます。特に、事業規模が大きくなると、取引量も増え、その管理は複雑になります。記帳代行を利用することで、事業者は正確で信頼性の高い帳簿作成が可能です。また、税務申告や融資の際に、必要な財務情報が容易に提供できます。

 

記帳ミスが防げ、税務調査において問題が発生するリスクを低減させる役割も果たします。記帳代行を行ってもらうことで、事業者は本業に集中でき、業務効率向上が見込まれるでしょう。

 

<h4>相談・コンサルティング

 

税理士による相談・コンサルティングは、企業や個人事業主が税務や財務に関する複雑な問題を解決するための助言を提供するサービスです。

節税対策、資金計画、経営戦略の立案など、事業運営に欠かせないさまざまなアドバイスが行われます。

例えば、適切な法人形態の選択や、税務上のメリットを引き出す方法を提案することにより、事業者が利益を最大化できるようサポートします。

税法や会計基準の変更に対応するための情報提供も行われ、事業者が最新の法令に準拠した経営が行えるようなサポートが可能です。

 

<h4>決算・申告・巡回監査

 

決算・申告・巡回監査は、税理士の独占業務のひとつです、

企業や個人事業主の財務状況を正確に把握し、適切な税務申告を行うために不可欠なサービスです。

 

決算業務では、貸借対照表や損益計算書等財務諸表の作成を行い、決算時における企業の収益や費用を正確に計上します。これに基づき、法人税や所得税などの各種税金の申告を行い、適正な税務処理が行われます。

巡回監査は、税理士が定期的に事業所を訪問し、帳簿や会計処理が適切に行われているかを確認する業務です。事業者が法令を遵守し、財務上のリスクを最小限に抑制できます。巡回監査を通じて、税理士は事業者と緊密なコミュニケーションが図れ、必要な改善策やアドバイスの提供が可能です。

 

<h2>税理士事務所と税理士法人の違い

税理士事務所と似たことばに税理士法人がありますが、組織形態が異なる点に特徴があります。税理士法人にはどのような特徴があるのかについて、ここでは紹介します。

 

<h3>業務内容は同じだが、組織形態が異なる

税理士事務所と税理士法人は、いずれも税務や会計業務を行うのですが、組織形態に違いがあります。税理士事務所は、個人事業主や小規模な事業者が運営していることが多いのに対し、税理士法人は、複数の税理士が共同で経営する法人組織です。業務内容自体には大きな違いはありませんが、法人であるため、より幅広いサービスを提供することが可能です。

 

<h3>税理士法人の特徴

税理士法人は、税理士事務所と違い法人組織なので、「支店を展開することが可能」「代表者が不在となっても業務を継続できる」点が、税理士事務所との大きな違いです。

<h4>支店を展開することが可能

 

税理士法人は、複数の税理士が共同で運営する法人組織であり、その規模や運営体制に応じて支店展開が可能です。支店を設立することで、地域ごとのクライアントに対してより密接なサポートが提供でき、地域に根ざしたサービス展開が可能です。

 

支店展開により、税理士法人全体の業務量を分散し、各支店が専門的な知識や経験を活かしたサービスが提供でき、クライアントの多様なニーズに応じた対応が見込まれます。

支店を展開することで、税理士法人が成長し、競争力の向上が図れるでしょう。

 

<h4>代表者が不在となった場合でも業務を継続できる

 

税理士事務所の場合、代表者の税理士がケガや病気等により死亡した場合、業務の続行が不可能となります。事務所を閉鎖しなければなりません、

税理士法人の場合、法人組織であるため、代表者が不在となった場合でも、他の税理士が業務を引き継いで業務の継続が可能です。

 

クライアントは代表者の不在によるサービスの中断や支障を気にすることなく、安定したサポートが受けられます。また、法人組織としての強みを生かし、複数の税理士が協力して業務を遂行するため、個人事務所よりも幅広い業務領域をカバーすることが可能です。そのため、税理士法人はクライアントに対して、信頼性の高いサービスを提供できます。

 

<h2>「会計士事務所」と「税理士事務所」の違い

会計事務所と税理士事務所は同じでありますが、「会計士事務所」は、公認会計士によって運営されている事務所です。会計士事務所と税理士事務所との相違点や、公認会計士、税理士との相違点についても解説します。

 

<h3>代表者の所持資格が違う

「会計士事務所」と「税理士事務所」の大きな違いは、代表者が持つ資格にあります。会計士事務所は、公認会計士が運営しています。しかし業務内容に関しては、通常税理士事務所と大差ありません。

税理士が「会計事務所」を名乗ることは可能ですが、「会計士事務所」とは名乗れません。

 

<h3>税理士と公認会計士の違いとは?

税理士も公認会計士も国家資格でありますが、それぞれ税理士試験、公認会計士試験に合格しなければなりません。

税理士、公認会計士について、取扱いができる業務が異なりますので、紹介します。

 

<h4>税理士

税理士とは、税に関する専門家です。税理士試験に合格しないと名乗れません。

税理士法により、以下の3つの独占業務があります。

 

  • 税務代理
  • 税務相談
  • 税務書類作成代行

 

税務代理は、クライアントに代わって税務署に申告したり、税務調査に対応したりすることが可能です。

 

税に関する相談業務も税理士の独占業務です。節税対策や税法が改正した場合に、解釈に関しての相談業務も行えます。

また、決算書や確定申告書といった税務書類をクライアントに代わって税理士は作成でき、信頼性の高い決算書類の作成が可能です。

 

<h4>公認会計士

公認会計士は、監査業務を独占業務としており、企業の財務諸表の監査、経営コンサルティングなどを業務として行っています。監査業務は、企業の経営の透明性を高め、投資家や債権者の保護に重要な役割を果たしています。

 

公認会計士は、税理士登録ができ、登録することで、税理士同様の税務業務が行える点が特徴です。

 

<h2>自分に合う税理士を見つけるポイントとは

自分にあった税理士を見つけるポイントは以下の4点です。

 

  • 相性がよさそうかどうか
  • 適切な料金かどうか
  • レスポンスが早いか
  • 積極的な提案が期待できるか

 

<h3>相性がよさそうかどうか

税理士を選ぶ際に重要なのは、相性のよしあしです。

いくら税務知識が豊富な税理士であっても。コミュニケーションが円滑でなかったり、タイムリーな情報提供ができなかったりの税理士であるならば、相性がいいとはいえません。

サービスや料金も大切ですが、相性がよさそうかどうか、信頼できるかどうかによって税理士を決めることが、長期的な関係を築くうえで重要な要素となります。

 

初めての面談や相談で、相手の人柄や仕事に対する姿勢を確認し、自分に合うかどうかを見極めることが重要です。

 

<h3>適切な料金かどうか

税理士を選ぶ際には、料金も重要な判断基準となります。提供されるサービスの内容に対して、料金が適切かどうかを確認することが重要です。

相場よりも安すぎる場合、サービスの質に問題がある恐れもあるため注意が必要です。また、高額な料金を請求される場合には、その理由を確認したうえで、納得して依頼するようにしましょう。

 

<h3>レスポンスが早いか

レスポンスや緊急時の対応の早い税理士もまた、税理士選びには重要な要素といえます。

決算業務の不明点を確認したい場合や、特に税務調査の通知があった場合、レスポンスが遅いと不安になります。

素早い返信を心がけている税理士であれば、安心して業務を任せられるでしょう。

 

<h3>積極的な提案が期待できるか

資金繰りや節税といった、事業者が知りたい情報や提案について積極的に応えられるかも、税理士選びにおいて重要です。

税理士の中には、聞かれたことのみしか回答しない税理士も少なからず存在します。

事業者のニーズをすばやくキャッチし、節税対案の情報提供や、キャッシュフローの改善するための提案等を積極的に行える税理士を選ぶようにしましょう。

 

<h2>まとめ

税理士事務所と会計事務所、会計士事務所は、名称や運営者の保有資格が税理士または公認会計士の違いこそあるものの、取り扱っている業務に変わりはありません。

 

税理士法人は、支店の開設が可能であるので、支店がたくさんある企業にとっては利便性が高いといえるでしょう。税理士事務所の場合、代表税理士が亡くなった場合、存続できません。一方、税理士法人においては、継続して取引が可能です。

 

自分に合った税理士を選ぶためには、税理士との相性が大切です。また、料金において適切かどうかも重要な要素となります。

相談業務や、コンサルティングといった、希望する業務に強みがあるかどうかをチェックして税理士を選ぶことも重要なので、後悔しない税理士選びを心がけましょう。