事業を遂行するにあたって、事業主はさまざまな知識を駆使して運営していかなければなりません。とりわけ、毎日の経理処理や、年に一度の決算業務など、税理士との関係は切っても切れない関係にあるのではないでしょうか。そのためには、税理士との信頼関係を築くことが重要であるといえるでしょう。
本記事では、事業主はどのようにして税理士と信頼関係を築く必要があるのかについて解説します。事業主がなぜ税理士と信頼関係を築く必要があるのか、そして税理士が取り扱っているサービスについて紹介します。
事業主が税理士と信頼関係を築くためには、どのような点を心がければいいのかについて解説しますので、いかにして税理士と信頼関係を築けばいいのか思案している事業者の方はぜひ参考にしてください。
事業主はなぜ税理士と信頼関係を築くことが必要なのか
事業主が税理士と信頼関係を築くことが必要な主な要因として、以下の5点があります。
- 的確な財務アドバイスを受けるため
- 税務リスクを最小限に抑えるため
- 長期的な経営戦略を支援してもらうため
- 法令改正への迅速な対応
- 精神的な安心感を得るため
それぞれについて解説します。
的確な財務アドバイスを受けるため
税理士との信頼関係を築いていれば、的確な財務アドバイスを受けることが可能となります。
現状の財務状況、例えば資金繰りの状況や資金調達のタイミングなどの判断が、事業主にとって難しい場合があります。
税理士は、財務状況が正確に把握できるため、事業主に対して節税対策や資金繰りの改善策などの提案が可能です。
税理士と信頼関係が構築できていれば、事業主が抱える課題に的確にアドバイスを受けられ、業績改善が見込まれるでしょう。
税務リスクを最小限に抑えるため
税金に関する解釈に相違があり、申告内容に誤りがあった場合、または申告そのものを怠った場合、修正に時間がかかったり加算税や延滞税を支払ったりすることも避けられません。
税理士との信頼関係が築けていなければ、事業主自身が修正申告を行わなければなりません。事業以外に時間がとられることはもちろん、幅広い税務知識が要求されます。
税理士と連携が取れていれば、事前にミスを防げ、事業主は安心して事業に邁進できるでしょう。
長期的な経営戦略を支援してもらうため
長期的な経営戦略の支援を受けることも、事業主にとって大切です。専門家の目によって経営戦略を支援してもらうことで、経営の安定化が見込まれます。
税理士は事業の成長を見据えたアドバイスも提供しています。現状分析を行うことで課題が見つかり、事業の強みや弱みの分析をすることで、経営悪化した理由が特定できます。
事業主は、客観的な分析を行ってもらえれば、長期的な経営戦略を支援してもらうことが可能となるでしょう。
法令改正への迅速な対応
税理士と信頼関係が築けていると、法令改正への迅速な対応が可能となります。
税理士は税務のプロフェッショナルです。税法は頻繁に改正されるので、事業主は税理士と日頃から信頼関係が築けていれば、必要な情報をタイムリーに提供してもらえることが可能となります。
法令が改正することを事前にキャッチできることで、事業主は事前に税負担の増減が予測できるため、キャッシュフローの改善および業務改善にもつながることが可能です。
精神的な安心感を得るため
税理士との信頼関係が構築されていると、精神的な安心感を得られます。複雑で専門性の高い税務や会計業務を税理士に一任できるためです。
特に、税務署員が税務調査に入った場合、事業主に代わって税理士が税務官とのやりとりが可能です。
事業主にとって税理士と信頼関係を築けていれば、不利益な指摘に際しても、修正申告の指摘においても、迅速な対応が可能となるので、税務に関する不安が払拭できるでしょう。
税理士が事業主に対して行っているサービス
ここでは、税理士が事業主に対して行っているサービスについて解説します。
事業主に対しての、主なサービスとして、以下の6点があるので順を追って紹介しましょう。
- 税務の代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
- 経理・会計サポート
- 経営コンサルティング
- 資金調達支援
税務の代理
税務の代理とは、税理士の独占業務で、納税者である事業者に代わって税務署に所得税や法人税、相続税の申告を代行して行うことをさします。
税務官公署(国税不服審判所を含む)に対しての税法などの規定に基づく申告や申請、請求、不服申立てなど税務調査や処分に対する主張についての代理や代行が可能です。
具体例として、税務調査に入った時の立会いがあります。税理士は、事業者に代わって税務官との対応が可能です。
税務署から修正の指摘のあった場合の修正申告書の提出や、過大な納税があった場合における還付請求手続きである更生の請求なども税務の代理に含まれます。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、納税者である事業者が、税務官公署に提出する書類を作成することです。
税務書類の具体例として、個人事業等の決算書の作成や、法人の決算内容に基づいた法人税の決算書や申告書の作成があります。なお、税務書類の作成も、税理士の独占業務のひとつです。
税務相談
税務相談もまた税理士の独占業務で、税務に関する専門的なアドバイスを提供する業務です。
事業主に対する節税対策のアドバイスや税務調査対応の相談、事業承継に関する税務相談などは、税務相談に該当します。
税務は複雑で、税金の種類によって控除額や税率などが異なるので、具体的な場面で解決策を提示することは税理士以外認められていません。
経理・会計サポート
税理士は、事業者が経理業務において、正確な会計処理ができるようにサポートしています。具体的には、日常の取引の記帳代行や、給与計算の代行、年末調整業務の代行処理などがあります。
通常、事業者が日々の記帳や給与計算を行う必要があるのですが、これらの業務を行うのには時間と知識が必要です。税理士が代行することで、正確な記帳や計算が可能であると同時に、事業者にとっては事業に専念できるメリットがあるといえるでしょう。
経営コンサルティング
税理士は、税務や会計のみならず、経営全般に関するアドバイスも提供しています。
税理士はさまざまな業種のクライアントより税務や財務のノウハウを蓄積しています。
資金繰りの改善方法の提案や、事業計画書の作成、利益改善のための助言が可能です。
業績管理やコスト削減の提案など、事業の成長を支えるコンサルティング業務に注力する税理士もいます。
業界特有の知識を活かし、事業の方向性や中期計画の見直しにも対応し、事業主のニーズに応えることが可能です。
資金調達支援
事業の運営や拡大、新規事業の立ち上げには、資金が必要です。
税理士は、事業者の決算状況から、的確に資金調達のタイミングや所要金額の把握が可能です。
税理士は、資金繰り表や試算表といった金融機関が融資申込において必要な書類作成を行い、事業主に対して申請をサポートします。
書類だけでなく、金融機関への説明する際のポイントについてもアドバイスも行い、円滑な資金調達ができるよう支援します。
また、資金調達は金融機関融資だけではありません。税理士は助成金や補助金の活用についても事業主に助言を行うことで、事業の発展に寄与します。
税理士との信頼関係を築くためには
では、事業主は税理士と信頼関係を築くためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
- コミュニケーションを密にする
- 誠実な情報開示
- 専門性を尊重し、積極的に意見を取り入れる
- フィードバックを提供する
それぞれ、順を追って解説します。
コミュニケーションを密にする
事業主は、税理士とコミュニケーションを密にすることが必要です。なぜなら、コミュニケーションを頻繁にとりあえることで、税理士は、事業主の財務状況を正確に把握できるからです。コミュニケーションが疎遠であれば、税理士は、現状を把握できないため、経営判断において誤りがあっても気づかない状態が発生しかねません。緊密な連携が取れているならば、税理士は的確なアドバイスやサポートが行える可能性があります。
その意味においても、事業主は、税理士とコミュニケーションを密にとることが重要といえるでしょう。
誠実な情報開示
誠実な情報開示もまた、税理士との信頼関係を構築するためにも重要といえます。
事業の状況や財務状況について、包み隠さず正直に伝えることで、税理士から的確な助言やサポートが得られるからです。
情報開示を怠ったり、あるいは虚偽の情報を税理士に開示したりすれば、税理士にとっても、正確な判断ができません。なにより、税理士に対して信用失墜になりかねません。
信頼関係を築くうえにも、誠実な情報開示が必要であるといえます。
専門性を尊重し、積極的に意見を取り入れる
税理士は税務の専門家であるので、事業主は税理士の意見や提案を尊重して、事業に取り入れることが信頼関係を築くことにつながります。税理士は、複雑な税務処理や最新の税制の改正などに関して、深い知識を持ち合わせています。
事業主は税理士の知識を事業に取り入れることで、税理士との連携が円滑になり、より質の高いアドバイスを税理士より受けられることが期待できます。
フィードバックを提供する
税理士からのアドバイスが、事業においてどのような影響を及ぼしたのかについて、税理士にフィードバックすることは、信頼関係を築くうえでとても重要です。税理士が提供したアドバイスが、事業のニーズにあっているかを、税理士が認識できます。フィードバックがなければ、税理士自身が、事業ニーズに合致しているのかどうかが判断できません。事業主の率直なフィードバックにより、互いの理解が深まり、信頼関係がいっそう強固になることが期待できるでしょう。
まとめ
事業主は、事業を運営するうえにおいて、税理士との信頼関係を築くことはとても重要です。税理士は税務や財務の知識が豊富なプロフェッショナルであるからです。
税理士と信頼関係を構築することで、的確な助言や法令改正への迅速な対応が可能となります。
税理士との信頼関係を築くためには、コミュニケーションを密にして、誠実な情報開示を行わければなりません。また、税理士の助言を積極的に事業に生かしてフィードバックすることで、今まで以上の信頼関係が築けると考えられます。
本記事を参考に、税理士との信頼関係を構築できれば幸いです。