
税理士は、単なる税務申告の代行者ではなく、事業の健全な運営を支える重要なパートナーです。しかし、数多くの税理士事務所の中から自社に最適な税理士を選ぶことは容易ではありません。
料金体系や専門分野、対応の丁寧さなど、比較すべきポイントは多岐にわたります。紹介や価格だけで決めてしまうと、後々ミスマッチが生じる恐れがあり、注意が必要です。
本記事では、税理士の探し方や税理士事務所のタイプおよび選ぶ際のポイント・注意点について解説します。初めての税理士選びで不安を抱える経営者の方はぜひ参考にしてください。
税理士の探し方7選
これまで経営者自身で仕訳作業や確定申告を行ってきた場合でも、法人化したり事業規模が大きくなったりすると、日々の業務に加えて会計処理まで自力でこなすことが難しくなります。
そうなると、専門家である税理士へ依頼する必要が生じます。しかし、そもそもどのように税理士を探せばよいのか迷われる方も少なくありません。
以下では、税理士を探す際に役立つ具体的な方法について、7つ紹介します。
インターネットでの検索
インターネット検索は、最も手軽に税理士を探せる方法です。
事務所の特徴や得意分野、料金体系、口コミなどを比較でき、自分の業種にマッチした税理士を絞り込むことも容易です。
また、公式サイトには代表者の経歴や対応範囲が掲載されているため、相性を見極める判断材料にもなります。
検索から問い合わせ、オンライン相談までワンストップで行える点も利便性が高く、初めて税理士と契約する方にも向いています。
日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト
日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトは、公的な情報に基づいて登録税理士を検索できる信頼性の高いサービスです。所在地・氏名・業務内容などを条件に絞り込めるため、地域密着型の税理士を探したい場合にも適しています。
無資格業者に依頼するリスクを避けられ、また事務所の基本情報を網羅的に確認できるため、安心して税理士を選べるでしょう。
知人からの紹介
知人からの紹介は、実際に税理士を利用したうえでの情報なので、信頼性の高い探し方と言えます。
業務対応の丁寧さやレスポンスの速さ、料金の妥当性など、サイトでは分かりにくい実態を具体的に聞けるため、ミスマッチを防ぎやすくなります。
また、紹介によるつながりはコミュニケーションも円滑に進みやすく、長期的な関係を築きやすい傾向があるため、初めて税理士を依頼する方に特に適した探し方です。
金融機関からの紹介
金融機関は多くの税理士と取引関係を持っていることが多く、事業規模や業種に合った専門性の高い税理士を紹介してくれる場合があります。
特に融資や資金繰りを重視したい事業者にとっては、金融機関視点で信頼できる税理士とつながれる点に利点があります。
また、紹介という形を取ることで、比較的スムーズに面談や提案につながるケースも多いです。時間をかけずに税理士を探したい方にも向いています。
税理士主催のセミナーへの参加
税理士が主催するセミナーに参加すると、知見や説明の分かりやすさ、参加者への姿勢などを直接確認できるため、相性を見極めるのに最適です。
また、最新の税制改正や節税方法など、実務に即した内容を発信している税理士であれば、実務への理解度や実務対応力が図れます。セミナー後に個別相談を受け付けているケースも多く、契約前に具体的な悩みを相談できるメリットがあります。
商工会議所を通じて探す
商工会議所では、中小企業の経営支援の一環として税理士紹介サービスを行っている地域も多く、信頼できる税理士を紹介してもらえる安心感があります。
特に創業者や小規模事業者の場合、補助金・融資・記帳指導など幅広いサポートが必要です。また、地域事情に精通した税理士とつながりやすいため、継続的な支援を求める方にも適した方法です。
異業種交流会で探す
異業種交流会には、税理士が参加していることが多いです。税理士本人と直接会って話せるため、コミュニケーションの相性や人柄を判断しやすくなります。
交流会では、参加している経営者から評判を聞けるケースもあり、実際のサポート内容や対応の誠実さなど、リアルな情報を得られやすいです。
交流会では、業種や経営課題に合った税理士に出会える可能性も高く、信頼できる税理士を探したい方に適した方法と言えるでしょう。
税理士事務所のタイプは3通り
税理士を探す場合、以下の3つのタイプの税理士事務所があります。
それぞれのタイプについて、順を追って紹介します。
- 低価格型
- 付加価値型
- 特化型
低価格型
低価格型は、記帳代行や申告書作成など、基本的な税務サービスに特化し、料金を抑えた形態の税理士事務所です。
多くの顧客を抱えることでコストを下げる運営モデルが多く、スタートアップや小規模事業者にとって利用しやすい価格帯で提供されている点が特徴です。
一方で、担当者との面談機会が少なかったり、訪問頻度を抑えられたりしているなど、サポートの深さには限界がある場合もあります。
税務処理のみを任せたい方や、会計コストを抑えたい事業者に向いているタイプと言えます。
付加価値型
付加価値型は、税務対応に加えて経営改善・資金繰り対策・補助金申請支援など、企業の成長を支える総合的なサービスを提供するタイプです。
税理士自身が経営パートナーとして伴走し、財務分析や事業計画の作成支援など、実務に踏み込んだサポートが受けられるのが特徴です。
料金は低価格型より高めですが、経営に対する助言の質が高く、中長期的な企業価値向上を重視する事業者に適しています。経営課題を相談したい経営者に特に選ばれる傾向があります。
特化型
特化型は、業種・業務領域・課題別に専門性の高い税理士事務所です。「医療特化」「IT特化」など、特定分野に精通している点が強みです。
同業他社の事例を熟知しており、業界特有の税務処理や助成金制度にも強いため、専門性の高い対応を求める事業者に向いています。
また、特定ニーズに合わせたサービス設計がされていることが多く、専門業界ならではの細かな相談にも対応しやすい点が特徴です。業界知識や深いサポートを重視する方におすすめです。
税理士を見極める4つのポイント
これまで、税理士の探し方やタイプについて解説しました。では、実際に経営者が税理士を探す場合、どのような点について注意して探すべきでしょうか。
ここでは、経営者が税理士探しにおいて、見極めたい以下の4つのポイントについて紹介します。
- 自社の業種に精通している税理士を選ぶ
- 料金体系がしっかりしている
- レスポンスや緊急時の対応が早い
- 高圧的な言動を行っていない
自社の業種に精通している税理士を選ぶ
自社の業種に詳しい税理士を選ぶことは、継続的な経営改善につながる重要なポイントです。業界ごとに税務上の特性や補助金制度、利益構造は大きく異なります。
その分野を熟知した税理士はより的確で実践的なアドバイスが可能です。
また、同業者の事例に基づいた節税方法や資金繰りの改善策を提示できるため、意思決定のスピードも上がります。
料金体系がしっかりしている
税理士事務所の料金体系は事務所ごとに大きく異なるため、事前に内容を明確に説明してくれる税理士を選ぶことが重要です。
記帳代行・月次顧問料・決算申告料など、どの作業にどれだけ費用が発生するのかが透明であれば、契約後のトラブルを防げます。
複数の事務所から見積もりを取ることもおすすめです。料金とサービスのバランスを比較することで、自社に最適な税理士を見極めやすくなるでしょう。
レスポンスや緊急時の対応が早い
税務相談や急なトラブルが発生した際、迅速に対応してくれる税理士は非常に心強い存在です。特に税務調査対応や融資資料の提出など、期限が厳しい場面ではレスポンスの早さが経営リスクを軽減します。
また、普段からコミュニケーションが取りやすい税理士は、相談しやすい環境を作ってくれます。初回面談やメールのやり取りで、返信の早さや対応の丁寧さを確かめておくと、契約後のミスマッチが避けられるでしょう。
高圧的な言動を行っていない
税理士との関係は長期にわたることが多いため、コミュニケーションの相性は非常に重要です。高圧的な態度や専門用語を並べて説明するだけの税理士では、相談しづらい雰囲気となり、結果として適切な情報共有ができなくなる恐れがあります。
面談時の態度や発言、質問に対する反応などをよく観察し、信頼関係を築ける相手かどうかを判断することが大切です。
税理士探しで陥りやすい注意点
税理士探しでは、つい紹介や料金だけで決めてしまいがちです。しかし、しっかり見極めないと、後でトラブルや後悔を招く恐れがあります。
以下では、税理士探しで陥りやすい注意点について解説します。
紹介だけで決めない
知人や金融機関からの紹介は信頼性の高い情報源ですが、その情報だけを頼りに税理士を決めることは避けた方が安心です。
紹介者にとって相性の良い税理士でも、自社の業種や経営方針に合うとは限りません。また、料金体系やサポート範囲が十分に確認されないまま契約すると、後になって「思っていたサービスと違う」というミスマッチが生じることもあります。
紹介を参考にしつつ、必ず複数の税理士と面談し、サービス内容・専門性・コミュニケーションの相性を自社でも確認することが重要です。
金額だけで探さない
料金の安さだけで税理士を選ぶと、大きな失敗につながる恐れがあるので注意が必要です。
低価格帯の事務所では、担当者が多くの顧客を抱えるため、細かな相談や経営助言までサポートする余裕がないケースもあります。一方、料金が高い場合でも、それに見合うサポート内容とは限らないため、費用とサービスのバランスを見る視点が欠かせません。
料金表だけで判断するのではなく、提供されるサービス内容と期待する成果を総合的に比較して決めることが大事です。
短期間に何度も税理士を変えない
税理士を短期間で何度も変更すると、引継ぎがスムーズに進まず、会計データの整合性や税務申告に影響が出るリスクがあります。また、税理士との関係性は時間をかけて築かれるものであり、度重なる変更は「経営状況や方針が安定していない」と受け取られる恐れもあります。
対応が不誠実・レスポンスが極端に遅い場合など、明確な理由があれば変更は必要です。しかし、相性が合わないと感じた際も、まずは面談や改善要望を伝え、関係を調整する努力を行う方が、長期的にメリットが大きいと言えます。
まとめ
税理士選びは、事業の将来を左右する大切な経営判断のひとつです。インターネット検索や商工会議所の紹介など、探し方にはさまざまな選択肢がありますが、自社に合った税理士かどうかを見極めることが重要です。
税理士事務所のタイプには「低価格型」「付加価値型」「特化型」の3つのタイプがあるので、自社が求めるサービスに応じて決めることをおすすめします。
自社の業種を理解し、明確な料金体系を提示してくれる税理士を選ぶことは、経営の安定につながる重要なポイントです。一方で、紹介や料金の安さだけを基準に選んでしまうと、思わぬミスマッチに後悔する可能性があります。
より良い経営体制を築くためにも、安心して相談できる相性の良い税理士を慎重に見極め、後悔しない選択を心がけましょう。



