
会社設立は、事業を本格的に成長させたいと考える方にとって重要な選択肢の一つです。
一方で、「何から準備すればよいのか」「手続きや費用はどれくらいかかるのか」といった疑問を抱く方も少なくありません。
本記事では、会社設立の基本的な考え方から準備や手続きの流れ、必要となる費用および設立後の届出について解説します。
あわせて、会社を設立するメリット・デメリットにも触れていますので、法人化を検討する際の判断としてご活用ください。
会社設立の基本知識
会社設立とは、事業を法人として行うために必要な法的手続きを行い、社会的に独立した存在として認められることを指します。
そのためには、どのような準備が必要かについて以下で解説します。
会社設立とは何か
会社設立とは、法人格を取得し、法律上「個人とは別の存在」として事業を行うための手続きを指します。具体的には、定款の作成・認証や資本金の払い込み、法務局への設立登記などを経て会社として正式に認められます。
会社を設立すると、契約や財産の名義が法人となり、代表者個人とは切り離して事業活動が可能です。また、法人でなければ取引できない企業や制度も存在するため、事業拡大や信用力向上を目的に会社設立が選択されるケースも少なくありません。
事業の形態を明確にし、継続的な活動基盤を整える行為が会社設立といえます。
会社設立に必要な準備
会社設立を円滑に進めるためには、事前準備が欠かせません。
事業者が会社を設立するにあたって、まず準備することは次の3点です。
- 事業計画書の作成
- 会社設立に必要な基礎情報の決定
- 資本金の設定
それぞれ順を追って解説します。
事業計画書の作成
会社設立前に事業計画書を作ることは、法的な必須事項ではないものの、事業の方向性や収支見込みを明確にするため重要です。
市場分析や資金計画を整理することで、金融機関の融資や出資において円滑になりやすいです。
会社設立に必要な基礎情報の決定
会社設立では、会社の基本情報を先に決める必要があります。形態や商号、事業目的などは定款に記載し、登記内容として登録されるため、慎重に検討することが大切です。
会社設立における必要事項として、以下のものがあります。
- 会社形態
会社形態とは、株式会社や合同会社など事業の法人形態を指します。
- 商号(会社名)
商号は会社の名前であり、ブランドイメージや業務内容が伝わる名称を選びつつ、商標や類似商号の調査を事前に行うことが望ましいです。
- 事業目的
事業目的は会社が行う業務内容を定款に記載する項目です。具体的かつ網羅的に定めることが重要です。
- 本店所在地
本店所在地は会社の主たる事務所の住所です。税務署や自治体への所管地となります。
- 資本金
資本金は会社設立時に用意する資金です。
- 会社設立日
会社設立日は登記が完了した日であり、事業年度や税務手続きの起点となります。
- 会計年度
会計年度は決算日を含む1年間の期間を指し、税務申告や決算書作成の基準となります。
- 役員や株主の構成
会社設立時には代表者や取締役、株主を決めます。役員は会社の業務執行や意思決定を担い、株主は出資者として利益配分権を持ちます。
資本金の設定
資本金の設定は、事業継続に必要な資金を見積もって決定することが重要です。
資本金は、会社法では下限が定められていないため、1円からでも会社の設立は可能です。しかしながら、極端に資本金が少ないと、会社の信用力がないものと見なされかねません。
取引先が与信調査や、金融機関の融資の判断材料として資本金をチェックします。
資本金は、信用度を判断するひとつの指標です。設立した会社は事業実績が少ないため、会社としての信用度を対外的に示すものとして資本金額が重要といえます。
会社設立の流れについて
会社を設立するに際しての流れは、一般的には以下の通りです。
- 発起人を決める
- 定款を作成する
- 公証役場で定款の認証を受ける
- 資本金の払い込みを行う
- 登記申請書類を用意し登記申請する
1.発起人を決める
発起人は、会社設立を企画し、定款の作成や資本金の出資、取締役の選任を行います。1名でも設立可能ですが、複数名で設立する場合は出資比率や役割分担を明確にしておく必要があります。
発起人は原則として設立後の株主となるため、将来の経営体制や意思決定を見据えて慎重に決定することが重要です。
2.定款を作成する
定款は会社の基本ルールを定めた書類で、「会社の憲法」とも呼ばれます。商号や事業目的、本店所在地、資本金などの絶対的記載事項を盛り込み、正確に作成しなければなりません。
不備があると認証や登記ができないため、内容の妥当性や将来の事業展開も考慮して作成することが求められます。
3.公証役場で定款の認証を受ける
株式会社を設立する場合、作成した定款は公証役場で認証を受ける必要があります。公証人が定款内容を確認し、適法であることを証明する手続きです。
認証には手数料や収入印紙代がかかるため、事前に必要書類や費用を確認しておくと、手続きを円滑に進められます。
4.資本金の払い込みを行う
定款認証後、発起人は資本金を自身の個人口座へ払い込みます。この払い込みが完了して初めて、会社設立の実体があると認められます。
通帳の写しなどは登記申請時に必要となるため、入金履歴が確認できる形で保存しておくことが重要です。
5.登記申請書類を用意し登記申請する
資本金の払い込み後、登記申請書や定款、払込証明書などの書類を揃え、法務局へ登記申請を行います。
登記が受理された日が会社設立日となり、法人として正式に成立します。書類不備があると訂正が必要となるため、事前確認が重要です。
会社設立にかかる費用
会社設立には、登記費用以外にもさまざまな費用がかかります。会社設立にかかる費用として、主に次のものがあります。
- 定款認証手数料
- 登録免許税
- 専門家への依頼費用
定款認証手数料について
株式会社を設立する場合、定款は公証役場で認証を受ける必要があり手数料が発生します。公証役場で定款認証を受ける場合、約3万円~の費用がかかります。また、収入印紙代として4万円が必要です。なお、電子定款を利用すれば収入印紙代を節約でき、費用削減につながります。
登録免許税について
登録免許税は、法務局で会社設立の登記申請時に必要な税金です。株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は最低6万円と定められており、資本金額に応じて増減します。
登記が受理されなければ会社は成立しないため、設立費用の中でも必ず発生する固定的なコストといえます。
専門家への依頼費用
会社設立に際して、司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合、報酬が発生します。依頼する専門家により費用は異なりますが、およそ5万〜15万円が相場です。
費用はかかりますが、書類不備の防止や手続きの迅速化が期待できます。時間や手間を削減したい場合、有効な選択肢といえるでしょう。
会社設立後の手続き
会社設立後に、手続きをしなければならないこととして、以下の点があるので、それぞれ解説します。
- 税務署・都道府県・市町村への届出
- 社会保険・労働保険の手続き
- 法人口座開設
税務署・都道府県・市町村への届出
会社設立後は、所轄の税務署や都道府県、市町村へ各種届出を行うことが必要です。
所轄の税務署には、「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」があります。期限内に提出しなければ、税制上の不利を受ける場合があるので注意しましょう。
都道府県や市町村には「法人設立届出書」を提出します。提出期限は、会社設立の日からおおむね1ヶ月以内とされています。
社会保険・労働保険の手続き
役員や従業員がいる場合、社会保険や労働保険の加入手続きが必要です。
健康保険・厚生年金に加入する従業員がいる場合、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を届け出ます。
また、労働者が1名でもいる場合、労災保険・雇用保険に加入することが義務付けられており、労働基準監督署やハローワークで手続きを行います。
法人口座開設
会社設立後は、事業用の法人口座を開設します。資本金管理や取引先からの入金、税金の支払いに不可欠なため、早めの準備が重要です。
金融機関では登記事項証明書や定款の提出を求められることが多く、審査に時間がかかる場合もあります。
会社を設立するメリット
会社を設立するにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下の4点があるので、それぞれ紹介します。
- 社会的な信用を得やすくなる
- 決算月を自由に設定できる
- 節税対策の選択肢が多い
- 資金調達がスムーズになる
社会的な信用を得やすくなる
会社を設立すると、法人として登記されるため、取引先や金融機関からの信用を得やすくなります。法人名義での契約や口座開設が可能となり、個人事業主では難しい取引条件を提示される場合もあります。
継続性や組織性が評価されやすい点は、大きなメリットといえるでしょう。
決算月を自由に設定できる
会社では、決算月を事業の繁忙期や資金繰りを考慮して自由に設定できます。個人事業主のように暦年に縛られないため、決算業務の負担を分散しやすくなります。
資金計画も立てやすくなり、経営の実態にあわせた設定が可能です。
節税対策の選択肢が多い
法人では、役員報酬や退職金、福利厚生費などを活用した節税対策が可能です。所得の分散や経費計上の幅が広がるため、一定以上の利益が見込まれる場合、税負担を抑えやすくなります。
資金調達がスムーズになる
会社設立により、金融機関からの融資や出資を受けやすくなります。決算書の提出が前提となることで、事業の透明性が高まり、資金調達の選択肢が広がります。
将来的な事業拡大を見据えた場合、法人化は有利に働くことが多いです。
会社を設立するデメリット
一方で、会社を設立にあたってのデメリットとして、次の4点があるので、それぞれ解説します。
- 設立手続きが煩雑で時間がかかる
- 設立コスト以外に維持コストも必要
- 赤字でも納めなければならない税金がある
- 決算処理が煩雑
設立手続きが煩雑で時間がかかる
会社設立には、定款作成や認証、登記申請など複数の手続きが必要です。書類不備があると再提出が求められ、時間がかかる場合もあります。
事前準備や専門知識が求められる点は、個人事業に比べて負担といえます。
設立コスト以外に維持コストも必要
会社設立時には、資本金以外に定款の認証手数料や登録免許税などの費用が発生します。
設立後も税理士報酬や社会保険料などの維持費が継続的にかかります。
事業規模が小さい場合、これらの固定費が経営を圧迫する恐れもあるかもしれません。
赤字決算であっても納めければならない税金がある
法人では、利益が出ていない場合でも法人住民税の均等割などを納付する必要があります。赤字経営が続くと、資金繰りに影響する可能性があるため、事前に税負担の仕組みを理解しておくことが重要です。
決算処理が煩雑
法人決算では、貸借対照表や損益計算書の作成、法人税申告など高度な会計処理が求められます。
専門知識が必要となるため、税理士への依頼が実質的に不可欠となり、手間とコストが増える点はデメリットといえるでしょう。
まとめ
会社設立には、事業計画の策定や定款作成、登記申請など多くの手続きが伴い、一定の費用や時間も必要となります。
その一方で、社会的信用の向上や資金調達のしやすさ、税務面での選択肢が広がるなど、法人化ならではのメリットも存在します。
設立の流れや設立後の手続きを正しく理解し、自身の事業規模や将来像に合った判断を行うことが重要です。
会社設立の流れやコスト、およびメリットとデメリットを総合的に判断し、会社設立が本当に必要かを見極めたうえで、計画的に準備を進めていくことが望ましいでしょう。



