起業時に行う手続きとは?手順や方法・準備しておくべきことを徹底解説

起業を行う場合、法人・個人事業主のどちらかの形態を選択する必要があります。法人・個人事業主の選択の手続き方法や必要な費用が異なってきます。手際よく起業するためには、どのような手続きが必要なのか、費用はどの程度かかるのかを知っておく必要があるでしょう。

 

本記事では、起業における手続きについて解説します。起業とは何か、起業家が事業を興す際に考えておくべきことや知っておきたいことを紹介します。

起業する計画を考えている人は最後までお読みください。

<h2>起業とは何か?

起業とは、新しく事業を起こすことです。

一般的に、法人を新規で立ち上げることを起業といいます。

存在する会社を引き継いで、商品やサービスを提供することは起業とはいいません。

オリジナリティをもった商品やサービスを提供する必要があるでしょう。

 

一方で、法人を設立せずに、事業を営む事業者もいます。個人事業主と呼ばれています。

会社に依存することなく、事業者が、商品を作ったり、サービスを提供したりすることで収益をあげる点は法人・個人事業主は共通です。

 

よく似た言葉に、創業や開業、フリーランスといった言葉があります。

創業とは、起業家が新規で事業を立ち上げた場合に使われます。過去を振り返った時に使われるのが一般的です。

開業は、個人が新規で事業を立ち上げた場合に使われます。通常、法人設立の際にはあまり使用されません。

フリーランスとは、個人が会社や組織と雇用契約を結ばずに、取引先と業務委託というかたちで仕事を請け負う働き方の形態をいいます。個人の働き方をフリーランスと呼ぶため、会社に属しながら副業として業務委託契約を交わして請け負うケースもあります。

 

<h2>起業の手続き方法および必要な費用

起業する場合、どのような手続きが必要なのか、また、起業に際してどれくらい費用がかかるのかについて、個人事業主・法人それぞれについて紹介します。

 

<h3>起業の手続き方法

個人事業主、法人の手続き方法は異なります。

個人事業主は税務署に、法人の場合、税務署以外に公証人役場、法務局に赴かなければなりません。

 

<h4>個人事業主として起業する場合

個人事業主として起業する場合、所轄の税務署に「開業届」を提出しなければなりません。開業届は、事業開始の事実があってから1ヶ月以内に提出する必要があります。開業届は、国税HPよりダウンロードはが可能です。

 

個人事業主は、開業届以外にも、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出するケースがあります。確定申告を行う場合、個人事業主は「青色申告」「白色申告」のいずれかを選択しなければなりません。

青色申告は、最大65万円の控除が受けられる利点があります。控除の利点を生かすためには「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。

 

提出期限は、開業日が11日~15日の場合、その年の315日まで、116日以降なら開業日から2か月以内となっています。

青色申告控除の特典を受ける場合、「所得税の青色申告承認申請書」の提出を忘れずに行いましょう。

 

<h4>法人として起業する場合

法人として起業する場合、法人設立をしなければなりません。法人設立の順序は以下の通りです。

 

  1. 定款の作成・認証
  2. 資本金の払込
  3. 法務局で登記
  4. 税務署に届出
  5. 社会保険関連の手続き

 

  1. 定款の作成・認証

法人設立には定款が必要です。定款とは、会社を運営するにあたっての基本的なルールを記載した書類です。定款を作成すると、公証人役場へいき、公証人より認証を受けなければなりません。定款には、記載項目として、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。

 

記載事項 具体例
絶対的記載事項

(法律上必ず記載しないと定款が無効となる事項)

・事業の目的

・商号

・本社所在地

・資本金額(出資財産額)

・発起人の氏名と住所

相対的記載事項

(定款に記載しないと効力が生じない事項)

・変態設立事項

・設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除

・株主名簿管理人

・譲渡制限株式の指定買取人の指定を株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)以外の者の権限とする定め

・相続人等に対する売渡請求・単元株式数

・株券発行

・株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮

・取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置

・取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除

・社外取締役、会計参与、社外監査役及び会計監査人の責任限定契約

・取締役会設置会社における中間配当の定め

任意的記載事項

(記載するかしないか当事者に任されている事項)

・株式について

・株主総会について

・株主総会以外の機関について

・計算について

・公告について

(参考:日本公証人連合会|Q2.株式会社の定款の記載事項について、どのようなものがありますか。

 

  1. 資本金の払込

定款の認証を受けると、資本金を払込みます。しかし、この時点では、法人登記がされていないので、法人口座は作成できません。発起人の個人口座に資本金を振り込みます。

 

  1. 法務局で登記

定款の承認が得られると、法人登記を法務局で申請します。申請する書類として、以下のものがあります。

 

  • 登記申請書
  • 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
  • 定款
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役および設立時監査役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑登録証明書
  • 資本金の払込があったことを証する書面
  • 印鑑届出書
  • 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R

 

  1. 税務署に届出

法人登記が完了すると、税務署に「法人設立届出書」を提出します。法人設立より2ヶ月以内に、定款を添付して提出する必要があります。

 

  1. 社会保険関連の手続き

法人は規模の大小を問わず社会保険(健康保険、厚生年金保険等)に加入しなければなりません。法人設立より5日以内に年金事務所で手続きを行うことが必要です。

従業員が1名でもいる場合、労働保険に加入する必要があり、労働基準監督署またはハローワークで手続きを行います。

<h3>起業時における必要な費用

起業する際にかかる費用を、個人事業主・法人それぞれ確認しておきます。

<h4>個人事業主

個人事業主の場合、基本的に税務署に「開業届」を提出するだけで起業が可能です。そのため、起業における費用はかかりません。

 

もちろん事業運営に必要な資金、例えば仕入資金や事務所を借りる費用や、パソコンやデスクといった購入費用あるいはリース費用は、準備する必要があります。

<h4>法人

法人設立に際して、以下のようになります。

 

  1. 登記関連

登録免許税

株式会社:資本金×0.7% または15万円のいずれか高いほう

合同会社:資本金×0.7% または6万円のいずれか高いほう

 

  1. 定款関連

定款に貼付する収入印紙代:4万円(ただし、電子約款は不要)

認証手数料:3万円~5万円

謄本手数料:およそ2,000円(1250円で8枚程度必要)

 

なお、登記関連を司法書士に依頼した場合、別途費用がかかります。

<h2>起業する前に準備しておくべきこと

起業に際して、準備しておくべきことや考えておくべきこととして以下の4点があります。

 

  • ビジョンの明確化
  • 資金の準備および調達方法
  • 事業計画書の作成
  • 周りの人への理解と協力

 

それぞれ解説します。

 

<h3>ビジョンの明確化

起業する場合、起業家自身が事業を立ち上げることで何をやりたいのか、なぜ起業するのかを明確にしなければなりません。

「現状の会社勤めに不満であるから」や「起業することに対しての憧れ」などの理由で起業をすれば、いい結果は生まれません。起業するには、明確なビジョンを描く必要があります。

 

起業することで、どのような商品やサービスを世間に提供できるのか、提供することで、世の中にどのように貢献できるのかを考える必要があります。既存の商品やサービスを比較し、差別化できているかを検討しなければなりません。既存のものと差別化できなければ、埋没する恐れがあるからです。起業家自身が備えている知見やスキルをどのように生かせられるのか考えて起業することが重要です。

 

<h3>資金の準備および調達方法

起業する場合、自己資金を準備するのが一般的とされています。

自己資金は返済する必要のない資金なので、事業規模に応じて資金の準備を行うようにしましょう。

とはいえ、起業してすぐには、軌道に乗らない場合があります。思い通りの収益が上がらなかったり、予想外の支出が発生したりするかもしれません。

手持ち資金が枯渇することを回避するためにも、事業資金を調達する方法を知っておくことが重要です。

具体例として、日本政策金融公庫の創業融資や、各自治体が創業間もない事業者を対象とする制度融資等があります。特に日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証人で借入が可能です。返済期間が最長20年で、うち据置期間が5年以内であるので、有効に活用することで、ゆとりのあるキャッシュフローが見込まれるでしょう。

 

<h3>事業計画書の作成

起業する場合、事業計画書の作成は極めて重要です。事業計画書とは、事業を展開していくのかを示した書類です。売上や利益といった数字は、具体的に示す必要があります。

具体的な数字を算出するには、起業家自身、事業についてのシミュレーションができていなければ作成は厳しいため、事業計画書の作成は難しい作業といえるでしょう。

 

同時に事業計画書は、金融機関で創業融資を受けるに際して重要な書類となります。事業実績がないため、金融機関は、事業計画書を審査材料として融資の可否を判断するからです。事業計画書の作成が難しい場合、商工会議所等創業支援事業者に相談して作成することっをおすすめします。

 

<h3>周りの人への理解と協力

起業は起業家一人で行うものではありません。一緒に暮らす家族をはじめとする周りの人への理解と協力が必要です。

起業に対する理解や協力を周りの人から得られなければ、起業はうまくいかない恐れがあります。今までの生活環境が一変し、不安定な状況となるかもしれません。家族の中には、起業に対して反対されることも考えられるでしょう。

 

起業家の独断により起業した場合、周りの人との人間関係にヒビが入り、通常の生活を過ごせなくなる恐れも考えられます。

 

日常生活に支障がきたせば、事業どころではなくなります。起業家は、事業を起こす前には、周りの人を十分説得し、理解してもらう必要があるでしょう。

 

<h2>まとめ

起業の手続きは、個人事業主・法人とでは異なります。

個人事業主では開業届を所轄の税務署に提出するだけで済みますが、法人の場合、公証人役場で定款の承認を受け、法務局で法人登記を行う必要があります。法人登記が済めば、税務署や年金事務所等に届出書類を提出しなければなりません。

費用も個人事業主とは異なり、法人設立にはかかることも認識しましょう。司法書士に依頼すれば報酬費用が余分にかかる点も覚えておきましょう。

起業を行う場合、準備すべき点、考えておくべき点として、以下のものがあります。

 

  • ビジョンの明確化
  • 資金の準備および調達方法
  • 事業計画書の作成
  • 周りの人への理解と協力

 

起業家は、一人で起業するのではなく、周りのサポートがあってはじめて成立することを忘れずに準備を行いましょう。