起業時に融資を受けるのに税理士は必要か?融資種類や顧問契約のメリットを解説

起業時に融資を申し込むには不安があります。事業実績がほとんどないため無理もありません。起業家の中には、融資を受けるために、決算・税務の専門家である税理士が必要と考える人もいるかもしれません。果たして融資を受けるために税理士は本当に必要でしょうか。

 

本記事では、起業時に融資を受ける場合、税理士は必要であるのかについて解説します。起業時に利用可能な融資の種類や、融資を成功させるための税理士の選び方について紹介します。起業家が税理士と顧問契約するメリットについても紹介しますので、税理士と顧問契約を検討している事業者および会社設立を考えている起業家は参考にしてください。

 

 

起業時に融資が受けられる種類

起業時に事業者が融資を検討する場合、以下の3つの種類があります。一つずつ紹介します。

 

● 日本政策金融公庫
● 制度融資
● ビジネスローン

 

 

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完することを目的としている政府系金融機関です。新規で事業を始めた場合、銀行等市中金融機関の融資が厳しいと判断する案件であっても、日本政策金融公庫であれば、審査がスムーズに行われる場合があります。

 

起業時に利用可能な融資として、新創業融資制度があります。
新創業融資制度は、創業やスタートアップを支援するために、無担保・無保証人で利用可能です。対象事業者は、これから事業を始める事業者、または事業開始後税務申告を2期終えていない事業者です。
資金使途は、事業を始める際に必要な運転資金・設備資金です。融資限度額は3,000万円が限度となっています。(ただし運転資金は1,500万円が上限です。)

 

新創業融資制度を申し込む場合、創業計画書の提出が必要で、事業者は申込時に借入申込書等必要書類に添付します。

 

 

制度融資

制度融資とは、信用保証協会、市中金融機関、および都道府県等自治体が連携して行う融資です。信用保証協会は、全国に51ある公的な保証機関で、貸出先が返済できなくなった場合、貸出先に代わって融資先である市中金融機関に弁済します。自治体、および信用保証協会と連携して行う融資であるため、各金融機関が独自に行うプロパー融資ほど審査が厳しくないのが一般的です。

 

各都道府県により名称は異なりますが、起業した事業者を対象とした融資が制度融資の中にあるのが一般的で、金利も低目に設定されています。信用保証協会を利用するため、事業者は金利以外に信用保証協会に保証料を支払うことが必要です。
創業関連の制度融資については、会社の住所を管轄する信用保証協会および取引先金融機関で確認するのがいいでしょう。

 

 

ビジネスローン

ビジネスローンとは、法人・個人を問わず利用できる事業用のローンです。銀行等市中金融機関、信販会社および消費者金融で取り扱っており、起業時においても利用できるのが一般的です。
ビジネスローンの利点として、審査が早い点があります。日本政策金融公庫や制度融資の場合、3週間から1ヶ月ほど審査に時間がかかります。一方ビジネスローンの場合、通常1週間以内に資金調達が可能なため、急な出費が発生した場合において、ビジネスローンであれば対応が可能です。

 

ビジネスローンの留意するポイントとして、金利が高い点があります。ビジネスローンを取り扱っている会社の中には、10%を超えていたり、借入上限金額が決まっていたりする場合があります。借入時には、起業家はキャッシュフローを十分吟味して利用することがおすすめです。

 

 

融資を成功させるための税理士の選び方

融資を申し込む場合、審査に通らなければ資金調達ができません。融資を成功させるにあたって起業家はどのような税理士を選べばいいのかについて、以下の3点があります。

 

● 資金繰りのアドバイスをもらえるか
● 借入金額の目安を教えてくれるか
● 審査における面談の対処法を教えてくれるか

 

それぞれ順を追って説明します。

 

 

資金繰りのアドバイスをもらえるか

創業時には、開業資金が必要です。資金の出入りが激しくなると、キャッシュフローが厳しくなる恐れがあります。
とはいえ、起業して間もない場合、経営者は事業を軌道に乗せるために懸命で、資金繰りに関しては二の次ともなりかねません。売上や利益が順調に伸びても、手持ち資金がショートして倒産する、いわゆる「黒字倒産」となるリスクも潜んでいます。

 

税理士に相談することで、起業家は円滑な資金繰りが期待できます。税理士は客観的に財務内容を分析するため、起業家は、資金面における現状について的確なアドバイスが受けられ、安定した事業運営が見込まれるでしょう。

 

 

借入金額の目安を教えてくれるか

融資に強い税理士であれば、起業家に借入可能金額をアドバイスできます。また、その金額がどのようにして計算されるのかについても教えてもらえます。
税理士からあらかじめ借入金額の目安を教えてもらえることで、起業家は今後の事業の拡大戦略が立てやすくなるでしょう。

 

 

審査における面談の対処法を教えてくれるか

融資を申し込むと、金融機関は審査を行います。決算書や添付書類等による書類の審査以外に、経営者自身との面談があります。経営者は、金融機関の質問に的確に回答することが必要です。金融機関に提出した書類のチェック、および経営者へのヒアリングを総合的に判断し、金融機関は融資の諾否を決定します。

 

細かい数字について質問される可能性もあるので、起業家は、事前準備が必要です。
経験豊富な税理士であれば、的確な助言をもらえるため、安心して事前準備ができるでしょう。

 

 

起業家が税理士と顧問契約するメリット

起業家が税理士と顧問契約を結ぶことで受けられるメリットを、「税務・財務面」、「その他の面」の2点から解説します。

税務・財務面でのメリット

税務・財務面でのメリットとして、以下の4点があるので、それぞれ紹介します。

 

● 経理指導や記帳代行が可能
● 決算業務・確定申告代行が可能
● 節税対策を教えてもらえる
● 税務調査にも対応してもらえる

 

経理指導が受けられること

税理士と顧問契約を結ぶ利点として、経理指導を受けられる点があります。日々の取引の記帳について、どのようにしたらよいか迷うことが多いところですが、顧問契約を結ぶと疑問点に適切な指導が受けられるようになります。
特に事業規模が大きくなればなおさらです。
他の士業と異なり、取引記帳は事業運営している間、永続します。税理士の指導を受けることで正確な記帳が見込まれ、資金調達時に金融機関に提出する場合においても、事業者自体が信頼できる企業としての評価が得られるでしょう。

 

決算業務・確定申告代行が可能

税理士の独占業務の一つとして、税務書類の作成があります。税理士に一任することで、決算業務や確定申告業務の代行が可能となります。税務に関しては、高度な知識が必要です。起業家が一人で行う場合、手間や時間がかかります。書類記載に不備があれば、修正し再提出しなければなりません。
税理士と顧問契約を行うと、起業家は決算業務や確定申告業務を行う必要がありません。同時に、正確な決算書類や確定申告書の作成が可能となります。

 

節税対策を教えてもらえる

起業家にとっての関心事の一つに節税があります。税理士は税務のプロなので、さまざまな節税対策を教えてもらうことが可能です。
税理士に依頼せずに起業家が一人で確定申告を行った場合、知識不足のため、余分に税金を納付する可能性もあるかもしれません。顧問税理士がいれば、同じ資産を購入する場合でも、節税できる可能性があります。税理士に依頼することで、上手な節税が見込まれます。

 

税務調査にも対応してもらえる

税務調査とは、事業者が行った確定申告に間違いがないのかを税務署によって行う調査です。売上や所得、経費の内容、および計上漏れや計上の時期についても税務署はチェックします。税理士と顧問契約を行っていなければ、起業家自身が都度対応しなければなりません。
顧問契約を行っていると、税理士が税務調査に対応してもらえます。税務署から指摘があった場合でも、税理士の独占業務の一つである税務代理により、税務署への主張や陳述が可能です。

 

その他のメリット

税務・財務面以外のメリットとして、次の4点があるのでそれぞれ解説します。

 

● 給与計算や年末調整の代行が可能
● 補助金・助成金の相談が可能
● ネットワークを利用した士業等の紹介
● 経営や事業活動に専念できる

 

給与計算や年末調整の代行が可能

税理士と顧問契約することで、毎月の従業員の給与計算の依頼が可能です。勤怠データを税理士に渡すことで、従業員の所得金額や源泉所得税、社会保険料の計算を行ってくれます。
また、年末調整に関しても、税理士への依頼が可能です。計算が煩雑であるため、時間がかかります。税理士に依頼することで、スムーズな年末調整が見込まれるでしょう。

 

補助金・助成金の相談が可能

企業の資金調達は、融資だけではありません。補助金や助成金を申請することで資金調達が可能となる場合があります。顧問契約を結ぶことで、補助金や助成金の相談が可能です。必要書類や提出期限等、補助金や助成金を申請するためには守るべきことがたくさんあります。税理士に相談することで、起業家の事業に適した補助金や助成金に関して、適切なアドバイスを受けられるでしょう。

 

ネットワークを利用した士業等の紹介

これから会社を興すことを検討している場合、会社設立の手続きが必要です。定款の作成や法務局への法人設立登記、業種によっては許認可の取得も必要な場合があります。設立後も、雇用保険や労災保険にも加入しなければなりません。
税理士は通常、司法書士や行政書士、社会保険労務士といった士業とのネットワークを構築しています。会社設立を考えている起業家にとっては、幅広いネットワークを持つ税理士と顧問契約することで、会社設立がスムーズに行える利点があります。

 

経営や事業活動に専念できる

税理士と顧問契約を行っていなければ、起業家は日ごろの事業運営に加え、日々の記帳や決算作成、確定申告や納税金額の計算等、多岐にわたる作業を行わなければなりません。
税務業務は、高い知識や手間や時間を要します。間違いがあれば、起業家自身が修正の手続きを行わなければなりません。
税理士と顧問契約を交わすことで、これらの作業を税理士に任せて、起業家は経営や事業活動に専念できます。

 

 

まとめ

起業時において、融資を受けるためには税理士が必要かについて紹介しました。
創業時の融資には日本政策金融公庫の融資や制度融資、ビジネスローンがあります。
融資に強い税理士と顧問契約を結ぶと、金融機関の審査におけるヒアリングの対応方法にもアドバイスが受けられる可能性が高いです。
融資の相談以外にも、税理士は、経理指導や記帳代行が可能であったり、税務調査の対応を行ってくれたりします。起業家にとって、税理士と顧問契約を結ぶことで、事業に専念できるメリットがあります。

 

税理士との関わりは、創業時における融資だけではありません。
日々の記帳代行や決算書類の作成や申告納税金額の算出、税務調査の対応等、税理士でないと取扱いができない業務があります。
起業家はこれらの点を勘案して、顧問契約を行うようにしましょう。